ローヤルゼリー特有の成分アピシンの特徴
細胞増殖を促進し健康増進や老化抑制効果が期待されているアピシン
優れた健康食品として知られるローヤルゼリーには、「R物質」と呼ばれる特有の成分が豊富に含まれています。そのうちの一つがアピシンです。35万もの分子量を持ち、たんぱく質とオリゴ糖が結合した糖タンパク質です。
アピシンはローヤルゼリーに含まれるたんぱく質の半分以上を占めています。その研究は1990年頃から行われていますが、いまだ解明されていない部分が多く残されています。
これまでの研究で、アピシンには細胞増殖を促したり細胞死を防ぐ働きがあることが明らかにされています。健康増進や老化抑制効果が期待されているほか、再生医療への活用が検討されています。
アピシンの働き
細胞増殖を促す作用が認められている
アピシンには細胞増殖を強く促す作用が認められています。ヒトの血球系細胞(※1)にアピシンを添加して培養すると、1日後には細胞の数が約5倍に、5日後には約7倍に増殖することが確認されています。(参考元1)
もちろん細胞はアピシンを添加しなくても自らの力で増殖します。しかし、アピシンの有無によって細胞数に大きな差が生じたのです。ただし細胞の種類によっては、増殖の程度に差があることも分かっています。
(※1)白血球などの血液中に浮遊している細胞。
アピシンに期待されている効果
アピシンの細胞増殖作用は、健康増進や老化の抑制などさまざまな効果をもたらすと考えられています。今後のさらなる研究の進展が待たれます。
老化の抑制
私たちの体を構成している細胞は、分裂を繰り返すことで新しい細胞を作り出しています。ところが細胞の機能が低下すると、細胞分裂が停滞して新陳代謝が遅くなり老化が進んでしまいます。
ローヤルゼリーに含まれるアピシンによって細胞が増殖すると、細胞分裂が活発に起こり新陳代謝が促されます。その結果として老化の抑制に繋がります。
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生活習慣病を予防する
アピシンには細胞の死滅を防ぐ働きがあります。ネズミの肝細胞にアピシンを添加して培養した実験では、細胞増殖作用は強くありませんでしたが、細胞死を抑制して寿命が伸びることが確認されています。(参考元1)
肝臓は有害物質の解毒や分解を担う要とも言える臓器です。アピシンによって肝細胞の死滅が抑制されることで、生活習慣病の予防に繋がる可能性があります。
またアピシンを含むローヤルゼリーたんぱく質には、血液中のコレステロールを減らす効果が期待されています。「脂質異常症」の予防に繋がる可能性があります。
これはローヤルゼリーたんぱく質の働きで、余分なコレステロールが肝臓に取り込まれて、分解が促されるためと考えられています。
関連記事:ローヤルゼリーで脂質異常症を予防する
美肌効果
アピシンの細胞増殖作用は美肌にも有効です。
肌のハリと弾力を支えているのは真皮層(※2)に蓄えられているコラーゲンです。このコラーゲンは「線維芽細胞」が作り出しています。ところが年齢を重ねると線維芽細胞が老化して機能が低下するほか、線維芽細胞の数そのものが減少してしまいます。
その影響で真皮層からコラーゲンが失われていき、肌の水分を保つことができなくなります。アピシンには線維芽細胞を活性化する働きが期待できます。
ヒトの線維芽細胞にアピシンを添加したところ、細胞増殖が促進されコラーゲンの生成が促されることが確認されています。(参考元2)肌の保湿力を高める効果が期待できます。
(※2)表皮層と皮下組織に挟まれた層。
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ローヤルゼリーの品質を決めるアピシン
ミツバチの世界でローヤルゼリーは女王蜂のみが食べることができる特別食です。女王蜂の幼虫はローヤルゼリーを食べることで働き蜂の2~3倍の大きさまで成長します。
ローヤルゼリーに含まれる女王蜂を育てる成分は、長らく同じR物質であるデセン酸と考えられていました。
ところが最新の研究で、アピシンが女王蜂の成長に深く関与していることが分かってきました。女王蜂の幼虫が成長する過程で、アピシンのみが大きく減少することが確認されたのです。
これはアピシンに女王蜂の成長を促す働きがあることを示しています。さらにローヤルゼリーに含まれるアピシンの量が多いほど成長が早いことも分かりました。これらのことからアピシンを多く含むローヤルゼリーほど高品質であることが示されました。
アレルギーを引き起こすアピシン
老化の抑制や美肌効果が期待され、再生医療への活用も検討されているアピシンですが、良いことばかりではありません。
ローヤルゼリーにはアレルギーが報告されています。このアレルギーはローヤルゼリーに含まれる一部のたんぱく質が引き起こします。卵や牛乳のアレルギーと同じメカニズムです。
最近の研究では、ローヤルゼリーのアレルギーを引き起こす物質がアピシンであることが特定されました。たんぱく質は吸収に時間がかかる栄養素です。
体質によっては胃腸に負担がかかり、アナフィラキシーショック(※3)を引き起こすことがあります。心配な方はアレルギーリスクが低い「酵素分解ローヤルゼリー」(※4)がお勧めです。
(※3)アレルギー物質が体内に侵入することで起こる過剰な免疫反応。重篤な症状が引き起こされる。
(※4)予め酵素でたんぱく質をアミノ酸などに分解したローヤルゼリー。効果が損なわれることはないとされている。
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参考元1:ローヤルゼリータンパク質の特徴と機能 ミツバチ科学19(1):15-22
参考元2:ローヤルゼリータンパク質アピシンのヒト由来皮膚線維芽細胞株およびマウス由来骨芽細胞様細胞株に及ぼす作用